🌙 【読み聞かせ・寝かしつけ】月の下の小さな約束 第3章|心が静かになる30分物語

前回の第2章では、黒猫に「月(つき)」という名前をつけた青年が、
少しずつ穏やかな日常を取り戻していく様子が描かれました。

孤独だった部屋にぬくもりが生まれ、
月と過ごす時間が彼の心をやさしく満たしていきます。

そして今章では、静かな雨の夜。
月の瞳に映る“何かの記憶”が、彼の心を静かに揺らします。
夜のしずくが、ふたりの絆に小さな変化をもたらす物語です。

静かな夜に、誰かの声で物語を聞く——
そんな時間が、きっと一番やさしい眠りへと導いてくれるはずです。

この記事は、”恋人やお子さんに読み聞かせできる“寝かしつけ用台本”として書かれた短編物語です。
声に出して読むと約30分ほど。
明かりを落とし、ゆっくりと、穏やかな声で読んであげてください。

【読み聞かせ台本】月の下の小さな約束 第3章|月と雨の夜

【読み聞かせ台本】月の下の小さな約束 第3章|月と雨の夜

静かに降る夜の雨。
黒猫・月と青年が過ごす部屋の中に、
ひとしずくの想いが落ちていく。
それは、
まだ言葉にならない優しさの始まりでした。


読み聞かせ対象:恋人・パートナー・お子さん等。
読み手:ブログ来訪者(台本を読んであげる想定)。

読み聞かせのコツ(短く)

・声は低めで落ち着いて読んでください。

・一文ごとに少しだけ呼吸を整えてください。

・登場人物の気持ちを想像しながら読むと伝わりやすいです。

・静かなBGMを小さめに流すと雰囲気が出ます。

第3章 月と雨の夜

その夜、
空は朝から重たかった。


雲の色が少しずつ濃くなり、夕方には、
街全体が灰色の膜に包まれたようになっていた。


(小さくつぶやく)
「……降りそうだな。」


窓の外を見上げながら、
彼はつぶやいた。


月は、
いつものように窓辺に座って、
外をじっと見つめていた。


やがて、
ポツリ、ポツリ
と雨の音が響きはじめる。


屋根を打つ音がだんだん大きくなり、
静かな部屋の中に、
小さなリズムが流れた。


(やわらかく)
「おまえ、雨は平気か?」


月は振り向かず、
ただ耳をピクリと動かした。


雨音に耳をすませているようだった。


(小さく笑って)
「変なやつだな。
濡れるの、嫌じゃないのか。」


月は静かに立ち上がり、
ガラス越しに雨を見つめる。


その金色の瞳に、
街灯の光がゆらめいた。


ふと、彼の胸の奥に、
少しだけ切なさが流れた。


(少し間をおいて)
「……月、おまえ、
どこから来たんだ?」


答えはない。


ただ、
雨の音だけが続いていた。


窓の外に目をやると、
雨粒が街灯に照らされ、
銀の糸のように光っていた。


月はその光を追いながら、
ゆっくりと瞬きをした。


(やさしく)
「……おまえ、泣いてるのか?」


月は静かに目を閉じた。


その小さな背中を見つめながら、
彼は気づいた。


雨の音が、
どこか懐かしい。


心の奥で、
忘れていた何かがそっと揺れていた。


(小さく)
「……こんな夜も、悪くないな。」


部屋の灯りがやわらかく揺れ、
雨音がそのまま子守唄のように響いた。


そして月は、
静かにその瞳を閉じた。


彼もまた、
コーヒーの香りに包まれながら、
目を閉じた。


雨の夜に、
二つの呼吸がゆっくりと重なっていく。


(読み上げ目安:この第3章はゆっくり読んで約7〜9分です)

第4章予告:風のあと

雨が上がった翌朝。
月はいつものように窓辺にいた。
しかし、
その瞳の奥に宿る光は、
少しだけ違って見えた——。

(第4章では、雨の翌日に見せる黒猫の不思議な行動と、彼の決意が描かれます。続編は順次掲載予定。)

作:ハティン(読み聞かせ台本提供)|個人の読み聞かせ利用は自由です。音声配信や商用利用の場合はご相談ください。

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