夜の出会いから始まった、小さな約束の物語。
青年と黒猫「月」は、互いの寂しさを分け合いながら、やがて別れの時を迎えました。
第4章では、涙の中に確かに残った“ぬくもり”が描かれました。
そして今章では——その約束が、形を変えて息づく「その後」の物語。
静かに流れる時間の中で、
青年が見つける「やさしさの続き」を、どうぞ感じてください。
静かな夜に、誰かの声で物語を聞く——
そんな時間が、きっと一番やさしい眠りへと導いてくれるはずです。
この記事は、”恋人やお子さんに読み聞かせできる“寝かしつけ用台本”として書かれた短編物語です。
声に出して読むと約30分ほど。
明かりを落とし、ゆっくりと、穏やかな声で読んであげてください。
【読み聞かせ台本】月の下の小さな約束・エピローグ|月のいない夜に
静かな朝に訪れるのは、別れのあとに残る温もり。
それは悲しみではなく、優しさの記憶でした。
青年が思い出す“月”との日々に、そっと光が差していきます。
読み聞かせ対象:恋人・パートナー・お子さん等。
読み手:ブログ来訪者(台本を読んであげる想定)。
エピローグ 月のいない夜に
(静かな朝)
部屋の中に差し込む光は、
いつもと同じなのに、
どこか違って見えた。
小さな影が消えたあと、
青年の世界は少し広く、
そして少し静かになった。
食卓の隅に置かれた白い皿。
窓際の毛布。
そこにあった温もりが、
まだ空気の中に溶けている。
(青年)
「おはよう、月」
思わず声に出して、
自分でも苦笑いする。
そこに返事がないことを、
ちゃんとわかっているのに。
けれど、
不思議なことに、
胸の奥にあった“寂しさ”は、
痛みではなく、
静かな光のように感じられた。
それはたぶん、
あの夜に約束したからだ。
“いつか、
きっと笑えるように”と。
(青年)
「うん……ちゃんと笑えてるよ」
彼は立ち上がり、
窓を開けた。
風がそっと入り込む。
カーテンが揺れるたび、
一瞬、
黒い影が通り過ぎたような気がして、
思わず目を細める。
(青年)
「……見てた?」
その言葉に答えるように、
外でスズメが鳴いた。
青年は小さく息をつき、
そのまま微笑んだ。
街の人々の声、
通りを行く足音、
日常の音が少しずつ
彼の世界を満たしていく。
彼は最近、
近所の子どもに
声をかけるようになった。
転んだ子を起こしてあげたり、
重い荷物を持つ人を助けたりする。
それは月が教えてくれたことだ。
“やさしさは、
渡していくもの”だと。
(青年)
「ありがとう、月」
夜になった。
街の灯が消え、
空を見上げると、
丸い月が静かに浮かんでいた。
どこかで、
月も同じ空を見ているのかもしれない。
(青年)
「おやすみ」
その言葉は風に乗り、
空へ、
そしてどこか遠くへと流れていった。
――夜が静かであればあるほど、
彼の心の中では、
月がやさしく光っていた。
(読み上げ目安:このエピローグはゆっくり読んで約6〜7分です)
物語の終わりに
別れは終わりではなく、
優しさの形を変えること。
彼が笑えるようになった今、
月の約束は静かに果たされた。
それはきっと、
誰かの心にも届く光になるだろう。
(物語『月の下の小さな約束』完)

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