【読み聞かせ・寝かしつけ】喫茶ふたつ星 第2話|湯気の向こうに、まだ見えない夢

疲れているわけじゃない。
かといって、満たされているわけでもない。

心のどこかに、
“何かが足りない気がする”
――そんな夜があります。

うまく言葉にはできないけれど、
胸の奥がそっとざわめく夜。
誰かに悩みを打ち明けるほどでもなく、
けれど自分の中だけにしまっておくには、
ほんのすこし、息苦しい夜。

そんな夜にふと灯る、小さな灯りのような場所。
それが「喫茶ふたつ星」です。

ここでは、
まだ形にならない想いを抱えた人が、
一杯のコーヒーと、
静かなマスターの言葉に背中をそっと押されていきます。

第2話「湯気の向こうに、まだ見えない夢」では、
“夢を語るには、まだ自信がない”
そんな青年と出会います。

まだ、強い覚悟には変わっていない。
けれど消えることもない、小さな願い。
その想いが、湯気のように静かに立ちのぼる夜の物語です。

ここでは、

“恋人やお子さんに読み聞かせできる寝かしつけ用台本”
として書かれた短編物語です。

明かりを少し落とし、
ゆっくりと、穏やかな声で
読んであげてください。

心がやわらかくなる夜のひととき。
どうぞ、
「喫茶ふたつ星」で
静かな物語をお楽しみください。

【読み聞かせ台本】喫茶ふたつ星 第2話|湯気の合図

【読み聞かせ台本】喫茶ふたつ星 第2話|湯気の合図

バリスタを目指す青年が、夜の喫茶店で一杯のカフェミストを飲みながら、
まだ形にならない夢と向き合う物語です。
ゆっくりとした声で読み聞かせることを想定した台本です。

読み聞かせ対象:恋人・パートナー・大切な人。
読み手:あなた(台本を読んであげる想定)。
読み上げ目安:ゆっくり読んで約10分

第1章 蒼い夜の入口

(ゆっくりとした声で)
夜の街は、
夕焼けの色をとうに失い、
静かな蒼へと落ち着いていました。
ビルの窓に点々と灯る明かりが、
それぞれの夜を始めていきます。


(歩く足音を想像させるように)
コツ、
コツ、
と響く靴の音。
早くもなく、
遅すぎることもない。
何かを考えるには、
ちょうどいい歩幅でした。


青年は、
胸ポケットに入った封筒を指でなぞりながら、
灯りの少ない路地を曲がりました。
そこには、
小さな古いランプと、
「喫茶ふたつ星」の文字。


(少し息をゆるめるように)
扉を押すと、
心地よい鈴の音が、
そっと夜に混ざりました。


(静かに)
カラン。



第2章 湯気のある場所

店内は、
夜の空気に溶け込むようなランプの灯りと、
深く香るコーヒーの匂い。
奥には丸いテーブルが一つと、
磨かれたカウンター。


マスターが、
カウンターの内側で、
静かに湯を注いでいました。


(穏やかに)
青年
「……こんばんは」


マスター
「こんばんは。
冷えてきましたね。
どうぞ、奥の席でも構いませんよ」


青年は、
首を横に振り、
カウンターの端に腰を下ろしました。


(小さく息を吐くように)
青年
「何か、
あったかいものをください。
……甘すぎないやつ」


マスターは、
ふっと目尻をやわらかくして、
ポットの蓋をそっと閉じました。


マスター
「甘すぎないけれど、
ほっとできるもの。
……カフェミストなど、
いかがですか」



第3章 封筒とため息

(カップに湯気が立ちのぼる描写を、やわらかく語るように)
湯気は、
夜の静けさの中で、
まるで言葉のように立ちのぼります。
あたたかいけれど、
無理に主張しない。
けれど、
たしかにそこにある温度。


マスターは、
ゆっくりとカップを青年の前に置きました。


(少し間をあけて)
マスター
「その封筒。
折れそうなくらい、
きつく握っていましたね」


青年は驚き、
反射的に封筒を胸の前で隠すように抱えました。


青年
「……あ。
仕事の書類で。
大事なことが、
いろいろ、書いてあって」


その言葉のあと、
青年は一度、
封筒を見下ろし、
小さくため息を落としました。


(静かに、ゆっくり)
マスター
「そうですか。
――大事なものは、
紙より、
あなたの中にあるのでしょう」



第4章 見えない夢のかたち

青年は、
ふっと視線を落としました。
そして、
言葉を探すように、
静かに口を開きました。


(ゆっくり)
青年
「……僕、
バリスタになりたいんです。
本気で。
でも、
どう言えばいいのか、
どう始めればいいのか、
わからなくて」


「今の仕事を辞めるのか、
それとも続けながら練習するのか。
親に話すのか、
黙ったまま動くのか。
何かをするにも、
勇気が足りないんです」


「夢って、
ちゃんと形があるものじゃないと、
口にしちゃいけない気がして」


(静かに、ゆっくり、あたたかく)
マスター
「形のない夢も、
ちゃんとそこにあるものですよ」


青年は、
顔を上げました。
マスターは、
カップの湯気を見つめたまま、
静かに言葉を続けました。


(語りかけるように)
マスター
「たとえば、
コーヒーの香り。
見えないけれど、
たしかにそこにあって、
誰かの記憶に、
心に、
長く残ることもある」


「夢も同じですよ。
形がなくても、
湯気のように、
あなたの中から立ちのぼって、
周りの人の心を、
ほんの少しあたためることができる」


「それが、
きっと最初の合図です」


青年は、
胸の奥がじんわりと温まっていくのを感じました。
カフェミストの甘さが、
思ったより静かで、
やさしい味に感じられました。



第5章 湯気の合図

(深く息を吸うように)
青年
「……僕、
ちゃんと話してみようと思います。
自分の言葉で。
すぐに変えられなくても、
言葉にしたことから、
何かが始まるかもしれないから」


マスターは微笑み、
カップを拭きながら静かに頷きました。


マスター
「湯気が立つのは、
夜だけではありませんから」


青年は、
封筒をそっと胸ポケットに戻しました。
今度は、
握りしめるのではなく、
手を離したまま。


(穏やかに締めに向かう)
夜は、
静かに深くなっていきます。
けれど、
この夜は、
なぜか少しだけ、
明るく見えました。


カラン、
と響いた鈴の音が、
その夜の終わりを、
そっと照らしました。


作:ハティン(読み聞かせ台本提供)|個人の読み聞かせ利用は自由です。音声配信や商用利用の場合はご相談ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました